いわゆるクラウドと言っても、実際にはAWSも物理的に物が動いている世界で、どのようにクラウドの世界が作られているかをまとめてみようと思います。
ただし、基本的にはAWSの物理的な情報は非公開のものが多いので、情報の出どころが定かではない場合が多いため、参考程度にとどめていただけますと幸いです。

サーバー台数

https://www.publickey1.jp/blog/12/amazon_15.html

早速2012年の古い記事ではありますが、、、
Amazonクラウド全体の物理サーバは45万4400台、7100ラックではないかと書いています。また、東京リージョンは物理サーバが2万台と推測しています。
という記載があります。10年も前の記事ですでに2万台とのことですので、2022年現在では大阪リージョンもありますから、日本だけでも今ではもっと物理サーバーが存在するといえるでしょう。
また、AWSが提供するEC2は仮想サーバーと呼ばれるもので、物理サーバーの上に複数台稼働をいたします。
つまり、実際には 物理サーバー x 仮想サーバー 台数が稼働しています。

少し前にAmazonのプライムデーで使用されたサーバー台数がAWSのエンジニアから公開されていますが、40万台あまりのサーバーが使われたようです。(物理的にではなく仮想だと思われます。)

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1908/20/news088.html

  • Amazon ECインスタンスにより、Prime Day開始時に37万2000台相当のサーバを起動。ピーク時には42万6000台相当に
  • Amazon EBSによる63ペタバイトのブロックストレージと、1日あたり2兆1000億回のアクセス、1日あたり185ペタバイトのデータ転送
  • Amazon DynamoDBに対して合計7兆1100億回のAPIコール。ピーク時には1秒あたり4540万回のリクエストを処理
  • Amazon Auroraによる1900個のデータベースインスタンスと609テラバイトのデータベース。1480億回のトランザクション、

これだけで途方も無い数字です。
私が以前勤めていた会社でもサーバーを管理していましたが、それでも物理、仮想を含めて1000台あまりだったと記憶しています。

サーバー仕様

https://www.geekwire.com/2017/amazon-web-services-secret-weapon-custom-made-hardware-network/

AWS’s more recent custom storage servers hold 11 petabytes (one million GB) of data on 1,100 disks contained in a single standard-size 42U rack, up from the 8.8 PB in the 880-disk model that Hamilton showed

これはストレージやルーターの話ではありますが、彼らがハードウェアレベルでサーバー、およびチップセットをカスタマイズしていることがわかります。
国内のサービスでも、このようにハードウェアに造詣の深いエンジニアがいるところでは、自作サーバーで提供するという話もちらほら聞いたりします。(最近ではかなり減ってきた気がしますが)
また、AWSにはAWSの一部サービスを自社DCで動かすためのサービスとしてAWS Outpostsというものを提供しています。
おおよそこれらと同等の仕組み(またはそれ以上のもの)が実サービスでも提供されているのではないかと推測されます。

https://aws.amazon.com/jp/outposts/servers/

The 1U high server is suitable for 19ʺ wide cabinets, is 24ʺ deep, and uses an AWS Graviton2 processor to provide 64 vCPUs, 128 GiB memory, and 4 TB of local NVMe storage. The 2U high server is suitable for standard 19ʺ wide, 30ʺ deep cabinets, and uses an Intel processor to provide up to 128 vCPUs, 256 GiB memory, and 8 TB of local NVMe.
https://www.youtube.com/watch?v=k0ViCgOcR2Y&t=99s

2Uのサーバーだと、Intel CPUで最大128vCPU、256GiBメモリ、8TBのローカルNVMeとのことですから、ざっくりと計算して8GBメモリのPCでしたら32台分のサーバーということになります。

サーバーラック

東京だけで数万台の物理サーバーを置くのに、どういった構成になるのだろうと考えられるでしょうか。

https://aws.amazon.com/jp/outposts/rack/

こちらもOutpostsから引用しています。

Outposts rack is available in an industry-standard 42U rack form factor. It can scale from 1 rack up to 96 racks to create pools of compute and storage capacity.

1Uというのが最少(実際には1Uに2台などの半分のサイズのサーバーも存在)なので、それが最大42台搭載可能なラックがあるようです。

データセンター

https://aws.amazon.com/jp/compliance/data-center/data-centers/
AWSは公開情報として、データセンターを物理的にどのように管理しているかを情報として提供しています。

データセンターは容易に人がはいれず、許可された人間が必要なタイミングで申請を行い、何重ものゲートをくぐり抜けて、はじめてサーバーラックの前に立つことができます。
また、電気が途絶えても数日間は安全にサーバーをシャットダウンしたり、移動したりするために自社で発電設備を備える必要があります。

https://ascii.jp/elem/000/001/738/1738515/

停電当初はUPSの障害により、一部のサーバーで障害が発生したものの、これは約4時間で解消し、無事に非常用電源設備の運用に切り替えた。その後、石狩市役所、経済産業省など関係各所からの燃料調達により、非常用電源設備で約60時間も稼働させた。停電にも関わらず、約3000ラックを有する巨大データセンターを2日半無停止で運用し続けたのだ。

こちらは余談ですが、数年前に北海道を襲った震災では、さくらインターネット社の石狩のデータセンターで数日間自家発電で稼働したなんていう話題がありました。
国内の事業者でこれを最小のトラブルのみで稼働できたことで大変話題になりました。

AWSの東京リージョンも複数のAZ、つまりデータセンターが存在しています。(複数のデータセンターをまとめていると思われます)
こちらはWikileaksがリークした情報ですが、AWSのデータセンターの位置が公開されています。

https://gigazine.net/news/20181012-amazon-alas/

東京近辺のデータセンターの場所が8か所確認できました。
例えば江東区の豊洲にあるピン。「EQUINIX」という企業の所在地が指定されています。
おそらくインフラエンジニアの方なら、Equinicsなら本当だなと思うのではないでしょうか。
AWSとDirectConnectという自社データセンターと接続することが可能で、大型のデータセンターです。
今ではたくさんのデータセンターでDirectConnectが提供されていますが、何年も前はEquinicsのみだったと私は記憶しています。

https://ascii.jp/elem/000/001/579/1579489/

エクイニクス、「日本一AWSに近い場所」について濃い目に語る

また、印西のAmazonのデータセンターは比較的有名かと思います。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01422/091100002/

米Amazon Web Services(AWS)などのDCがある場所として「INZAI」の地名は世界に知れ渡っている。

データセンター同士のネットワークも世界中にあるデータセンターをつないでおり、ディザスタリカバリーやBCPなどを検討しやすいサービスとも言えます。
https://aws.amazon.com/jp/about-aws/global-infrastructure/global_network/

すべてのデータセンター、AZ、および AWS リージョンは、可用性の高い低レイテンシーの専用プライベートグローバルネットワークインフラストラクチャを介して相互接続されています。このネットワークは、大西洋、太平洋、インド洋をはじめ、地中海、紅海、南シナ海にわたって大洋横断ケーブルで接続された、完全に冗長性を持つパラレル 100 GbE メトロファイバーネットワーク上に構築されています。

まとめ

AWSはデータセンター、サーバーラック、サーバーといった物理的な構成で途方も無い作りになっています。
それぞれのレイヤーでトップクラスのエンジニア達が作り上げた世界があり、それらを画面でポチポチするだけで必要な時に必要なときだけ使える世界があります。
これらのおかげで、アプリケーションをAWSに乗せて、スモールスタートしても安全、かつ安心にサービスを開始できるようになります。
結果として、ユーザーも欲しいサービスをいつでも必要な時に必要な分だけ利用ができる、これがクラウドを選択する理由の一つになると考えられます。
クラウドとは決して見えない世界だけを指しているわけではなく、物理的に作られた世界であることがわかると面白いかなと思い、まとめてみました。

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